俳優・藤岡弘、。
仮面ライダーや探検隊の隊長など、私たちが知る姿は、じつは彼のほんの一面に過ぎない。
少々事情通の方なら、幼少期からさまざまな武道を体得し、陸海空海底とあらゆる資格や免許を所持していることもご存知のはず。しかし、それすらもまだ、他にもまだ多くのスキルを身につけあらゆる状況の中で生き抜くサバイバル術を習熟しているが、それも、メディアを通して知り得る彼の実態のごく一部に過ぎないのだ。
「私は生き方そのものがサバイバルなんです」
そう語る藤岡の日常は、いつも「サバイバル」と共にある。
忙しい俳優業の合間を縫って、中央アジア、南米、アフリカなど、世界100カ国近くのジャングルや紛争地を巡ってきた探検家、冒険家、ボランティア活動家として藤岡は、あまり知られていない顔だろう。全く何が起きるかわからない世界中の未踏の地で、あらゆる紛争地で、生死を彷徨うような過酷な修羅場を何度も体験してきたそう。そして、その経験を通して生きる術として身につけたサバイバル術を駆使し、仕事や日常生活をサバイブしてきた本物のアウトドアズマンなのだ。
そんな彼が、世界各地の極限の状況下を共に乗り越え、命を預けてきたキャンプ道具とは、一体どのようなものだろうか。
ぜひ見せていただきたいと依頼すると、「皆さんが楽しんでいるようなスタイルのキャンプではなく、私の場合、キャンプ道具とは究極のサバイバル道具になってしまいますが、それでもよろしいですか?」とのお返事をいただいた。
当然、我々に異論はありません。隊長!
生きるとは極限を生き抜く為に本物を探求し続けてきた男が選ぶ「サバイバル道具」とは。そして、ならではの道具の選択基準や、現代人が今こそ考えるべきいざという時の備えについてもお話を伺った。
Chapter
-
01.
藤岡流の道具選びの基準は「実」
-
02.
道具を1つだけ持つなら、迷わずナイフを選ぶ
-
03.
身につけられるサイズの刃物も大切
-
04.
マルチツールは3つの機能の使い勝手で選ぶ
-
05.
備えの備えの、さらに備え
-
06.
ライトの役割は照らすだけじゃない
-
07.
サバイバルには水と火が重要
-
08.
キャンプとは遊びを通して自力で生き抜く力を磨き得られる場
-
09.
behind story
俳優・藤岡弘、。
仮面ライダーや探検隊の隊長など、私たちが知る姿は、じつは彼のほんの一面に過ぎない。
少々事情通の方なら、幼少期からさまざまな武道を体得し、陸海空海底とあらゆる資格や免許を所持していることもご存知のはず。しかし、それすらもまだ、他にもまだ多くのスキルを身につけあらゆる状況の中で生き抜くサバイバル術を習熟しているが、それも、メディアを通して知り得る彼の実態のごく一部に過ぎないのだ。
「私は生き方そのものがサバイバルなんです」
そう語る藤岡の日常は、いつも「サバイバル」と共にある。
忙しい俳優業の合間を縫って、中央アジア、南米、アフリカなど、世界100カ国近くのジャングルや紛争地を巡ってきた探検家、冒険家、ボランティア活動家として藤岡は、あまり知られていない顔だろう。全く何が起きるかわからない世界中の未踏の地で、あらゆる紛争地で、生死を彷徨うような過酷な修羅場を何度も体験してきたそう。そして、その経験を通して生きる術として身につけたサバイバル術を駆使し、仕事や日常生活をサバイブしてきた本物のアウトドアズマンなのだ。
そんな彼が、世界各地の極限の状況下を共に乗り越え、命を預けてきたキャンプ道具とは、一体どのようなものだろうか。
ぜひ見せていただきたいと依頼すると、「皆さんが楽しんでいるようなスタイルのキャンプではなく、私の場合、キャンプ道具とは究極のサバイバル道具になってしまいますが、それでもよろしいですか?」とのお返事をいただいた。
当然、我々に異論はありません。隊長!
生きるとは極限を生き抜く為に本物を探求し続けてきた男が選ぶ「サバイバル道具」とは。そして、ならではの道具の選択基準や、現代人が今こそ考えるべきいざという時の備えについてもお話を伺った。
藤岡流の道具選びの基準は「実」
私の道具の選択基準は、見栄えや価値よりも、いかに実戦で使えるかという「実」1点のみ。
見掛け倒しの装飾的な道具は一切必要ない。命を預けるものなので、1つ1つを吟味して試して見て、本当に信頼できるものだけを選ぶようにしています。その本質さえ見失わなければ、自ずと優れた道具のみが手元に残ります。
道具を手にするときには必ず、なぜ、いつどのような時に、どのように使うのかを考える。それが想像できない道具は、意味をなさないただの飾りになってしまいます。
人生はサバイバルであり、何が起きるか分からない冒険の旅でもあります。想定外は、つまり死、私にとっては、人生をいかに生き抜くかという「目的」こそが、もっとも大事なこと。そのための手段は問わない。道具とは、あくまで目的を遂行するための手段の1つに過ぎないのです。
頑固なこだわりは持たず、新しくて便利な道具は柔軟に取り入れます。アナログやデジタルも。また、古くても良い道具は否定せずに使い続けています。
道具を1つだけ持つなら、迷わずナイフを選ぶ
まず私にとって、ナイフは凶器ではなく生き抜く為の必需品であり、最高の相棒。これがないとサバイバルは始まりません。身を守り、愛する者を守り、獲物を獲り、料理にも使う万能な道具。アウトドアで何か1つだけ持ち物を選べと言われたら、迷わず命を託せる絶対に安心出来るナイフを選びます。
市販されているものも使いますが、メインで愛用しているのは日本刀の刀工に注文して作ってもらった精魂込めた特別なナイフです。純粋なナイフというよりも、日本刀をナイフ仕立てにしたものと言えます。値は張りますが、価値のある本物を使うことは大事なことですよ、命を託す訳ですから。
グリップに巻いてあるのは250kgの耐荷重があるパラシュートコードで、いざという時、必要に応じてこれを解いて使うこともできます。
こうしたナイフを長いものから短いものまで、常に10本以上所有しています。旅先と目的によって、その中から4、5本を選び、大小いろいろなバッグに入れたり、身に付けたりします。
ナイフは消耗品です。たとえ1本だけいくら素晴らしいナイフを持っていたとしても、崖から落としてしまったり、熊と戦って折れてしまった時に、次のナイフを持っていなかったら意味がありません。
サバイバルで生き抜くということは、今必要なものだけでなく、ダメになった時に次を用意しておくことなのです。私の場合は、4段階、5段階に備えを用意している。とくにナイフは必要不可欠な道具の筆頭なので、1つダメでも次、それがダメでもさらに次をすぐに出せるよう備えておく。これが、私が長年の経験から導き出した答えです。
山で滑落した時に斜面に突き立てて体を止めたこともあったり、ナイフには今まで何度も命を救われてきました。フィールドでは必ず毎日1日を終える前に、感謝の気持ちを込めて研ぐことを忘れません。キャンプでは、子供たちにも年齢に応じたナイフを持たせるようにして、刃物の恐ろしさと、安全な使い方と共に刃物の扱いに慣れさせています。
これらは所有しているナイフのほんの一部。全て並べると、かなりの数になってしまって「藤岡弘、なんかやばいぞ」と思われかねないので、今日はこのくらいにしておきましょう。
身につけられるサイズの刃物も大切
私には武道の技術や知識や経験がありますが、やはり道具が完全にゼロになってしまっては、できることが限られ少なくなってしまう。
そこで、必ず肌身離さず身につけているのが、藤岡家に伝わる手裏剣術を使うための鉄の棒。これもナイフと同じく、日本刀に使う鉄を使って刀工に作ってもらったもので、クナイのように投げたり、自分の身を守るためのもの。これで急所を突けば、いざという時、どんなに凶暴な動物とも戦える武器になります。
箸としても使っているので、万が一食事中に襲われても、すぐさま戦うことができます。言いたくはないのですが、私は特殊な訓練を積んできたから、敵が間合いに入ってきた瞬間に投げつけて、百発百中で狙った場所(急所)に当てる自信があります。
このペンは、一見普通のペンに見えるでしょう。普通に字も書けますが、開けると中に刃物が仕込まれていて、ナイフとしても使える。ひねるとライトもつく、マルチな道具です。
コンパクトなナイフも、すぐ取り出せる場所に常に身につけているものの1つ。この手のナイフは、片手で開閉できるよう練習をしておくと便利ですね。
マルチツールは3つの機能の使い勝手で選ぶ
ナイフと共に、必ずどこにでも携行しているのがマルチツールです。さまざまな機能がコンパクトに収まっているので、これ1つあれば、いろいろな状況に対応することができます。大きいバッグには大きいマルチツールを入れ、小さなものはポケットに入れて身につけています。
よく使うのはハサミ、ノコギリ、大きめのプライヤー。選ぶ時は、この3つが使いやすいことを基準にするといい。車やバイク、道具の修理にも役立つので必需品です。あとは、ルーペを使って火を起こしたりもします。万能な道具ですね。
どれも紐が付いているでしょう?
これが非常に重要で、ポケットに入れるときは必ず紐をどこかに固定しておく。そうすれば、落として無くすことはありません。
カトラリーが1つにまとまったタイプも便利です。これだけに頼るのではなく、何かがなくなった時に、これ1つで代用できる「予備の予備」という意識で持っています。小さいですが、馬鹿にならないですよ。
ビジネスマンの方も、毎日会社に通勤するカバンに小さなマルチツールを1つ入れておく。それだけでも、突然の災害等、万が一の事態が起きた時には、さまざまな状況に対応できるようになります。
今の時代に、これって笑い事じゃない大事な備えある意識だと思いませんか。
備えの備えの、さらに備え
道具の持ち運びには、まず大きなバッグと小さなバッグの2つ、さらにウエストバッグも用意し、ベストなどの収納ポケットが多い服も活用します。
万が一、大きなバッグをなくしてしまっても、小さいバッグに同じようなセットをもう一式入れてあれば対応できる。それがダメでも、さらにウエストバッグに別の装備がある。全てのバッグをなくしてしまっても、まだ服の中に身につけている道具がある。
といった具合に、常に万が一に対して2重、3重に備えているのです。
これらの道具と収納方法は、フィールドで実際に何度も何度も繰り返し使ってみて、自分に合うものを選りすぐってきました。たくさんありますが、全ての道具がどこに入っているかを把握しているので、必要に応じてどれも素早く取り出すことができます。
海外の特殊部隊の実戦の訓練を受けたこともあるのですが、戦場での行動中は40〜50kgの装備を背負うことはザラです。実際は、そこに水や食料分の重さが加わります。私の場合、探検時は大体30〜40kgくらいには収まるように意識して荷物を作っています。
ライトの役割は照らすだけじゃない
道具に話を戻しましょう。
ライトもコンパクトなものから、小さいものから大きいものまで、必ず複数用意しています。500mくらい先まで照らせる特殊な高照度タイプや、クリップで胸ポケットに固定できる軽量な行動向きタイプなど、役割の違うものをいくつも持っています。
こうしたライトは国内よりも海外で見つけてくることが多いですね。
例えば、これなんかは木に固定して、そこに人がいるように見せかける囮用にも使えます。ボタン1つで光の色が変えられるタイプもあり、これは仲間との連絡用に使います。あらかじめ色と点滅のさせ方でサインを決めておけば、無線が使えない場合でも意思疎通ができるのです。パパパパッ、パパッとね。探検隊の撮影でも使ったアイディアです。
ちなみに、探検隊の撮影では、サバイバルの経験が浅い隊員が多かったので、ある意味で私が隊長であり、指導員でもあった。毎回最前線で、火のつけ方すらままならない隊員を鍛え上げながら、撮影を進めていました。
専門の指導員が付くことは稀で、サバイバルの部分は危険なため、死に至ることもあり、私が指示をして撮影が進むこともありました。例えば、潮が満ちる何時までに撮影を切り上げて、洞窟から出ないと閉じ込められてしまうよ、みたいなことまで言うこともありました。
サバイバルには水と火が重要
探検隊の撮影で出かけるようなジャングルでなくても、海外ではとくに水には気を使います。日本と違って、海外では煮沸しないと雑菌だらけで飲めない水が多いので特に注意すべきだと思います。
ちなみに、私はジャケットに入る道具だけで、1、2週間程度ならジャングルでも簡単に生き抜けます。食料はもちろん、現地調達です。水と並んで火が重要なので、小さなオイルライターも携行しています。もっと手軽にしたいときは、ガスライターを持つこともあります。
コンパクトな単眼鏡も必需品だし、大きい双眼鏡も持っていく。これは自衛隊が使っている双眼鏡で、覗くと対象物までの距離がわかる。市販はされていない特殊なものです。
他には、紐も絶対的に必要ですね。パラシュートコードで編んだリストバンドがあれば、いざという時には解いて自分の体を木に縛り付けたり、人を助けることもできる。エマージェンシーシートも同様に、小さいけれど素晴らしい働きをします。
原始的ではありますが、ホイッスルも大事。キャンプに出かけると、子供には必ず首から下げて身につけさせています。備えあって憂なし。これこそがキャンプの本分でしょう。
キャンプとは遊びを通して自力で生き抜く力を磨き得られる場
私の道具を見て、「やり過ぎだよ」、「そこまで必要ないよ」と感じる方は多いでしょう。私は俳優ですが、国際的にも活動し、国際俳優としてSAG(スクリーン・アクターズ・ギルド)の永久メンバーであり、探検家、冒険家、世界中旅をしたボランティア活動家でもあり、武道家でもあります。世界の僻地でも、どの様な状況の中でも、生き抜けることを基準に体験に基づき道具を選んでいるので、日本でキャンプを楽しむ方々には少々オーバーだとは思います。
家族でキャンプを楽しむ時は、私だって便利なキャンプ道具を使うことはありますし、新しい道具の中には良いものもたくさんあると思います。時間やエネルギーのロスを減らす便利な道具は、積極的に導入した方がいい。
でも、それらが私にとって本当に必要不可欠な道具かと言われると、少々違和感がある。例えばガスバーナーは便利な道具だけれど、燃料がなくなってしまったらただの鉄屑にすぎない。どんな現場でも、どう火をつけて、どう食材を捌いて、どう料理できるかこそが大事。両方を考えておく。2刀流の備えも重要。
キャンプとは、遊びを通して自力で生き抜く力や知恵を得られる実践の場です。そのための「実」を伴った道具を中心に、臨機応変に活用すれば良い。
もしもデジタル機器が急に使えなくなったらどうするか。道具を持たずに、道に迷って体1つになったらどうするか。常に最悪の事態を想定して、万が一のことを考え準備をしているのです、人生何が突然起きるか分かりませんからね。
近年は必要以上に物を持たない、ミニマムに暮らすことがもてはやされがちです。しかし、ジャングルや砂漠には行かないまでも、いざという時の備えを想像してみる。程度の違いこそあれ、誰にとっても役立つ考え方ではないでしょうか。
ちなみに、戦場では技術や知識だけでなく、まずは体調の管理が大切だと言われます。徹底した自己管理が、サバイバルに繋がるのです。何をどのくらい食べると体の調子が一番良く保てるかは、人それぞれ。道具にも同じことが言えて、私にとって便利な道具が、必ずしも皆さんにとっても便利なものとは限らない。
みんな同じじゃないから、アウトドアを楽しむ人の数だけそれぞれの方達にとっての最高の道具があるはずなのです。今の時代に適応した簡単で便利な道具は自由に活用すればいいと思います。探せば結構、良いものが見つかりますよ。
<後編に続く>
behind story
1本の記事だけでは、とても書き切れないほど、さまざまな道具を紹介してくれた藤岡さん。キャンプを通じて4人の子供をいかに教育してきたのか、長年乗り続けているキャンピングカーへのこだわりなど、まだまだお話は尽きない。続きは次週の<後編>にて、お楽しみいただきたい。
さらなる愛用道具の話やサバイバル術について知りたい方は、著書『藤岡弘、の人生はサバイバルだ』(本の泉社刊)もチェックしてみよう。10年以上前に書かれた本ではあるが、まるで現在の世の中に起きていることを予言したような先見性を感じさせる驚きの内容。深淵なる藤岡ワールドへの入り口的一冊である。
Text:池田圭
Photo:SPURKS編集部
松竹映画にてデビュー。 「仮面ライダー」で一躍ヒーローに。
映画「日本沈没」「野獣死すべし」「大空のサムライ」他、主演多数。
テレビ「勝海舟」「白い牙」「特捜最前線」「あすか」「藤岡弘、探検シリーズ」
他、主演多数。
アクションシーンにおいてはスタントを使わず自らこなすアクション俳優として映画界を牽引してきた。
1984年、ハリウッド映画「SFソードキル」の主役に抜擢され、日本人初でスクリーン・アクターズ・ギルド(全米映画俳優組合)のメンバーとなり、ハリウッド関係者との親交も深い。
真剣による演武を海外でも行う武道家としても知られ、柔道、空手、刀道、抜刀道、小太刀護身道他、あらゆる武道に精通。
国内はもとより世界数十ヶ国の紛争地域、難民キャンプにて救援や支援活動を展開してきた。
2016年NHK大河ドラマ「真田丸」にて本多忠勝役が話題となる。
また、同年3月全国公開の映画「仮面ライダー1号」で単独主演を務め、同作のDVD/ブルーレイは販売数“映画部門1位”を記録。
2020年、芸能生活55周年を迎え、「ソフトバンク」「タウンワーク」「ロッテ&カルビー」「日清焼そばUFO」等数々のCMに出演。
2021年、仮面ライダー放送開始から50周年を迎え、映画「スーパーヒーロー戦記」に出演。昭和・平成・令和と3つの時代で同じ役「本郷猛」として出演。
近年は、藤岡弘、ファミリーとして、天翔愛(長女20歳)・藤岡真威人(長男18歳)・天翔天音(次女17歳)・藤岡舞衣(三女14歳)と共に、家族愛の象徴として注目を集めている。