世間は空前のバンライフブーム。
リモートワークが瞬く間に普及していき、生活スタイルを見直す人が急増している。そんな中で「旅をしながら生活をしていく」そんな自由なスタイルのバンライフが今、注目されている。
「Home is where you park it」
車を停めたらそこが家。
不便を楽しむほんの少しの勇気があれば、そこには満たされた今よりも快適な世界が待っているのかも知れない。
「HUMAN MADE」COOの松沼礼さんもそんなバンライフに魅せられた一人。
これまでヴァナゴン、ハイラックス、ハイエースバンと数々のバンに乗り継いできた松沼さんに、今回はその中でも特に思い入れのあるVANAGONの話を中心にバンライフの魅力について語ってもらった。
Chapter
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01.
VANAGONとの出会いは一冊の本からだった
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02.
理想のVANAGONはLAにあった
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03.
バンライフを通じて手に入れたもの
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04.
トラブルの連続、それでも愛おしい
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05.
バンライフが変えた家族の日常風景
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06.
バンライフでこそ辿り着けた絶景
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07.
Endless trip is sweet dream
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08.
The Rolling Home
世間は空前のバンライフブーム。
リモートワークが瞬く間に普及していき、生活スタイルを見直す人が急増している。そんな中で「旅をしながら生活をしていく」そんな自由なスタイルのバンライフが今、注目されている。
「Home is where you park it」
車を停めたらそこが家。
不便を楽しむほんの少しの勇気があれば、そこには満たされた今よりも快適な世界が待っているのかも知れない。
「HUMAN MADE」COOの松沼礼さんもそんなバンライフに魅せられた一人。
これまでヴァナゴン、ハイラックス、ハイエースバンと数々のバンに乗り継いできた松沼さんに、今回はその中でも特に思い入れのあるVANAGONの話を中心にバンライフの魅力について語ってもらった。
VANAGONとの出会いは一冊の本からだった
松沼さんがバンライフを始めようと思ったきっかけは何だったのか。
それは一冊の本との出会いだったと言う。
「ステンドグラスアーティストであり、20代からの長年の先輩である谷和レオさんに見せてもらった1冊の本が出会いでした。」
その本はバンライフの始祖フォスター・ハンフィントンの名作「Home is where you park it」だ。
「タイトルにやられ、即購入しました。」
そこには松沼さんが憧れるライフスタイルと、フォスター・ハンフィントンへの憧れもあり、瞬く間に彼にのめり込み、掘り下げていった。
「彼の乗っているVANAGONが、バンライフとして完璧にフィットすることを知り、VANAGONを購入するきっかけとなりました。」
いざバンライフを始めるにあたってフォスターの著書をはじめ、バンライフにまつわるたくさんの本を購入した。本以外にもInstagramで得た情報も多かったようだ。
「何かぬくもりがあり、その方がリアリティがあったんですよね。Instagramでは、#vanlife、#vanlifers、#Vanlifestyle…などのたくさんの#(ハッシュタグ)より自分の理想なスタイルをキャプチャしては、部屋中の壁に貼りまくり、想像を膨らませていきました。」
部屋中に素敵なバンライフの写真を貼り、理想を高めていった。
「毎日よだれが出るくらいワクワクしていましたね。」
理想のVANAGONはLAにあった
谷和さんにLAでアメ車を輸入代行している方を紹介してもらった。
毎日何時間も輸入代行しているLAの方のブログで検索し続けていた彼のところに、
理想の一台とも言えるヴァナゴンが現れた。
それはアメリカ北カルフォルニアの75歳の男性が売りに出していたVANAGONだった。
「彼は何十年も家族でバンライフを楽しんだけど、年をとりアクセルを踏む力がなくなってきたから手放したいんだと言って、2万ドルで売りに出ていました。」
圧倒的に個体のすくないSUBARUのエンジンを乗せた通称SUBAGON。
この希少な個体との出会いも松沼さんの背中を押し、実車も見ずに即購入した。
納車まで待てず、居ても立っても居られず、LA出張にかこつけて実車を見に渡米した。
免許取得の18歳ぶりにマニュアルに乗り、何度もエンストをし、工場の人に笑われたのも良い思い出だと笑う。
その後、VANAGON乗りが愛用するLAのカスタムパーツ屋「GOWESTY」で、
「世界で一番かっこいいVANAGONにする!」ために200万円をかけてカスタム。
「家族の反感を買いました、、笑」
LAから船便で新潟について、そこから陸送で送ってもらい、納車までにかかった期間はおよそ半年。
「家に来た時はそれはもう感動でした。3人目の子供のようにかわいく、本当に子どものように愛しました。」
無事手元に届いたVANAGONの車内には嬉しい残しものが。
「当時のカタログが一緒に入っていて、前オーナーのおじいちゃんとその子供が昔食べたであろうピスタチオの殻が椅子の下に散乱していて、それも何か嬉しく掃除した記憶があります。」
バンライフを通じて手に入れたもの
実際にバンを手に入れて良かった点は数多くあれど、一番は「家族や仲間との時間」だと言う。
「思い立った時に出かけ、渋滞を気にすることなく目的地につく、目的地が目的ではなく、道中のプロセスが何よりも面白い。何か人生の縮図のような感じです。」
イギリスの詩人ロバート・ブラウニングの名言にこんな言葉がある。
「人間の真価は、その人が死んだとき、なにを為したで決まるのではなく、彼が生きていたとき、なにを為そうとしたかである」
結果ではなく過程をいかに楽しむか、バンを手にした松沼さんはそう変化していったのかも知れない。
「山の頂上に立つことよりもどうやってその山を目指すのか、誰とどこで待ち合わせていくのか、全てのプランにワクワクし、夏休み、冬休みはVANAGONで色々な場所を旅しました。」
VANAGONで寝て、起きて、一日を外で過ごすということ。
「こどもの毎日成長する姿を、VANAGONを通じて見ていた気がします。」
トラブルの連続、それでも愛おしい
旧車に乗る上で、心配なのが故障などの車両トラブル。その辺りはどうなのか松沼さんに聞いてみた。
「めちゃくちゃ壊れました(笑)」
VANAGONも例外ではなく、故障のトラブルは多かったようだ。
「故障した時はいつもお世話になっている車屋さんで直してもらうのですが、一番の思い出は夏休みの初日、10日間くらい日本を旅しようと出かけた行きの関越道のトンネルでマフラーがもげたことですね。すごい火花が出て、音もすごく、ビュンビュン通る関越道のトンネルで応急処置をして、何とか低速で走りました。」
その後、山梨県の北斗市で寄ったガソリンスタンドの店員さんに、その場で半田付けをして直してもらうという貴重な体験をした松沼さん。
「現代車ではありえない体験で、地元の人の温かさ、とんでもないピンチを乗り切るメンタル、行動力など、ふつうでは養えないような経験ができたのも今思えば、魅力ですね。笑」
バンライフが変えた家族の日常風景
週末のたびにお子さんを連れて家族でバンに乗り込み、旅に出る松沼さん。
バンライフはお子さんにどんな影響を与えたのだろうか。
「何よりも自然とのふれあいでしょうか。何もすることがなければ、何か遊びを考えて遊ぶ。ゲームも、スマホもなく、自然と自然に遊ぶ。これが自発的、能動的な性格を養っていったのではと思っています。」
現代の子育てにおいて切っても切れないゲーム、スマホ、動画。なければないで、自然と楽しむ力を子供たちは元々持っているのかも知れない。
「こどもの周りの友達も車に乗せて、いつも秘密基地のように遊んでいます。VANAGONを「ヴァナちゃん」と自分の兄弟のようにニックネームで呼んで、VANAGONと自分の友達が遊んでくれることをいつも誇らしく、嬉しいようです。」
バンライフでこそ辿り着けた絶景
日本各地をバンで周った松沼さんにオススメの場所を聞いてみた。
「バンでキャンプ場に行くことが多いですが、内村牧場キャンプ場、駒出池キャンプ場、洪庵キャンプ場はロケーションが良く、印象に残っています。」
キャンプ場以外にも、潮風が気持ちの良い、名も知れぬ海岸の駐車場など、普段の旅行ではなかなか泊まれないよう場所で泊まれるのもバンライフの魅力の一つだと松沼さんは語る。
Endless trip is sweet dream
バンライファーの旅に終わりはない。
日本中、世界中の絶景を旅したい。それはバンライファーならではの熱い夢。
「時間があれば、1か月くらいかけて、アメリカ横断は是非したいと思っています。
あとはアラスカのオーロラもバンで見に行きたいです。」
バンライフで旅をしていく中で登山やロードバイクや釣りなど、プラスαをバンライフで楽しんでいるバンライファーも多い。松沼さんに今後やってみたいことを聞いてみた。
「バンライフと登山ですね。子供が大きくなったら、一緒に日本中の山、ひいては世界中の山のふもとにバンを泊めて、キャンプグッズを持って、山でキャンプをして、写真を撮って、その美しさを世界に伝えて帰ってきて、また別の山をバンで目指す。これが憧れです。」
あの、お仕事は大丈夫ですか・・・?
「仕事があるので今はできないのですが、80歳になってもいいから元気な体でバンライフを続けたいと思ってます!(笑)」
The Rolling Home
人生のテーマを「NATUREとCULTUREの融合」とする松沼さん。
VANAGONを購入した際、先輩の谷和さんにこんな言葉をもらったそうだ。
「レイは車を買ったんじゃない、カルチャーを買ったんだ。」
The Rolling Home。
松沼さんが乗り継いだバンたちに貼ってあるステッカーのメッセージだ。
転がる家。
まさしく彼は「バンライフ=転がる家」というカルチャーを買ったのかも知れない。
1978年パリ生まれ。
カルチャーとネイチャーをこよなく愛する青年期を過ごし、2004年ユニクロに入社。
その後、UTブランドの立ち上げやグローバルマーケティングに従事し、2021年ライフスタイルブランド"HUMAN MADE"を展開するオツモ株式会社の取締役COOに就任。地球生活を面白くすることに邁進中。