SPURKS

Life Style

「キャンプを仕事にする」ということ

キャンプで”メシ”を食う人

佐久間 亮介

2022.7.12

皆さんはキャンプの仕事というと何を思い浮かべるだろうか。

「キャンプ場のオーナー」「キャンプブランドの社員」「アウトドアショップの店員」。そういったところだろうか。

佐久間亮介さんはキャンプを仕事にしている。キャンプを仕事にしているとは言っても、実際に肩書きを聞くと、本人も説明に困るほどその仕事は多岐に渡る。名刺にはこう書いてあった。

「キャンプで“メシ”を食う人」。

分かりやすいようで、何をしているのか全く分からない(笑)。

今回佐久間さんに話を聞き、「キャンプで“メシ”を食う」とは実際にどんな仕事をしているのか聞いてみた。

20代前半に脱サラし、キャンプの世界に身を投じ様々なアウトドアワークをこなしてきた佐久間さんに迫ることで、「キャンプを仕事にする」「好きなことを仕事にする」ということがどういったものなのか、少しでも感じてもらえるののではないだろうか。

そして、これからキャンプを仕事にしようと考えている人は佐久間さんの経験を何かのヒントにしていただきたい。

Chapter

  • 01.

    脱サラし、300箇所のキャンプ場をまわり、そして仕事になった

  • 02.

    蒔き続けた種が花を咲かせていった

  • 03.

    キャンプブーム到来。そして...

  • 04.

    これからキャンプを仕事にしていこうとする人たちへ

  • 05.

    佐久間さんのこれから。そして「キャンプを仕事にする」ということ

皆さんはキャンプの仕事というと何を思い浮かべるだろうか。

「キャンプ場のオーナー」「キャンプブランドの社員」「アウトドアショップの店員」。そういったところだろうか。

佐久間亮介さんはキャンプを仕事にしている。キャンプを仕事にしているとは言っても、実際に肩書きを聞くと、本人も説明に困るほどその仕事は多岐に渡る。名刺にはこう書いてあった。

「キャンプで“メシ”を食う人」。

分かりやすいようで、何をしているのか全く分からない(笑)。

今回佐久間さんに話を聞き、「キャンプで“メシ”を食う」とは実際にどんな仕事をしているのか聞いてみた。

20代前半に脱サラし、キャンプの世界に身を投じ様々なアウトドアワークをこなしてきた佐久間さんに迫ることで、「キャンプを仕事にする」「好きなことを仕事にする」ということがどういったものなのか、少しでも感じてもらえるののではないだろうか。

そして、これからキャンプを仕事にしようと考えている人は佐久間さんの経験を何かのヒントにしていただきたい。

脱サラし、300箇所のキャンプ場をまわり、そして仕事になった

キャンプで”メシ”を食う人 佐久間 亮介さん

1990年生まれで現在33歳の佐久間さんは大学を卒業後、大手メーカー企業に勤めていたが毎日のハードワークに疑問を持っていた。そんな時に当時GoogleのCMにあった「好きを仕事に」という言葉が佐久間さんの心に刺さった。

休みの日に趣味で行っていたキャンプで日々の疲れを癒していた佐久間さんは、自分と同じように日常に疲れている人にキャンプの必要性を伝えたいと思うようになっていった。

「キャンプの魅力を伝えられるのは自分しかいないと思い、思い切って会社を辞めました。」

そして2年勤めた会社を辞め、それからおよそ2年かけて300箇所近い日本中のキャンプ場を回った。

千葉県のフルーツ村オートキャンプ場からスタートし、海沿いを北上し行った。印象に残っているキャンプ場は多いがその中でも北海道の知床でキャンプをしたこと、沖縄の西表島の端の端の電気がないところでキャンプをしたことが今でも強く印象に残っているとのことだ。

この時の日本一周キャンプ旅の経験が、現在の佐久間さんの活動のベースになっていると言う。

「キャンプは僕を色んなところに連れていってくれました」

佐久間さんはこの旅でキャンプが持つ力の凄さ、キャンプ場が持つ力の凄さを感じることができたと言う。

「キャンプの魅力は素の自分に気づかせてくれること。非日常の素晴らしさや焚き火の癒しも魅力です。キャンプをすると自信もつくと思うんですよ。何もないところに行って自分でテントを建てて一晩過ごすって挑戦じゃないですか。自己実現ができる遊びがキャンプの魅力だと思います」

佐久間さんが好きなキャンプ場はどこですか?

「北軽井沢のスウィートグラスが好きというか、リスペクトしています。自然が美しく、浅間山が見えて、草原があって、林間があって。場内の設備も整えられていて心地よく、スタッフの対応も良く、パーフェクトなキャンプ場だと思ってます」

そして、この日本中のキャンプ旅をきっかけに、
佐久間さんの「キャンプを仕事にする」がスタートする。

蒔き続けた種が花を咲かせていった

ここ最近はキャンプを宿泊手段にした外遊び(画像はパックラフト)に夢中

佐久間さんのキャンプを仕事にするようになった始まりは、日本一周キャンプの旅をする中で始めたブログからだった。

「キャンプビギナー向けのキャンプブログをキュレーションではなく、自分たちの体験や目線で執筆し、自分たちの撮った写真を使い、熱量を込めて書いていきました。」

1年目は収益にはならずキャンプ場のアルバイトなどもしていたが、その当時はキャンプメディアもあまりなかったこともあり、徐々に注目され、2年目からは生活ができるくらいの広告収入などが得られるようになっていったという。

まずはキャンプのブログで“メシ”を食っていけたのだ。

300箇所のキャンプ場を一緒に巡った佐久間さん(右)とヤマケンさん(左)

ブログで得た資金でフィンランドやニュージーランドなど海外にもキャンプをしに行った佐久間さんは、旅をしながら海外のキャンプ事情にも触れた。

「そこで感じたのは、自然に対する価値観、距離感の違いでした。日本でもこれだけの自然を身近に感じられるような環境が整ったらどんなに素晴らしいだろう。そう感じました」

ニュージーランドでキャンプをしながら旅をしているときに「キャンプを仕事にする」ことの、転機の一つとなる出来事が起こった。

佐久間さんのブログを見ていた日本のテレビ局担当者から、「番組でキャンプを教える役で出演してくれないか」というオファーだった。

もう少し旅を続けたかった気持ちもあったが、このチャンスを逃すまいと帰国を決心し、そして「キャンプコーディネーターとしてテレビに出演する」という仕事が実現した。

キャンプを続け、ブログを続け、まさに蒔き続けた種に芽が出た瞬間だった。

キャンプブーム到来。そして...

程なくして世の中はキャンプブームになり、キャンプのメディアも増え、ライターとしての仕事も入ってくるようになった。

「ライター以外の仕事の依頼も徐々に入ってくるようになりました。未経験の仕事も多かったのですが、その頃は若さもあって、できるかできないかを考えるより、やるかやらないかのイズムで何事も積極的にチャレンジしていました」

今振り返ると、怖いもの知らずの多感な20代に色々なことに挑戦したことが、自分を大きく成長させてくれたと佐久間さんは振り返る。

日本中のキャンプの旅をしていた時も、各地で催されていたアウトドアイベントには極力行くようにし、関係者に声をかけては顔を覚えてもらえるようにしていた。

「キャンプ旅をしていた時に、イベントでテンマクデザインの担当者さんと知り合いになりました。いつか自分のギアを作りたいと思っていたので、アイデアが出てきたタイミングで相談し、コラボの企画が実現しました」

そしてテンマクデザインとコラボした、テント「ガレージテント」の企画/開発という仕事も実現した。

tent-Mark DESIGNS|ガレージテント

テンマクデザインと佐久間さんのコラボレーションで製作された「tent-Mark DESIGNS|ガレージテント」

何事にも挑戦してきた佐久間さん。
今では、

・ライター業
・ウェブメディア連載
・キャンプ記事の企画/ディレクション
・キャンプギアの企画/開発
・著書の執筆
・キャンプイベントの企画/コーディネイト
・アウトドアブランドのモデル

と、その仕事ぶりは実に多岐に渡る。

まさに「キャンプで”メシ”を食う人」だ。

これからキャンプを仕事にしていこうとする人たちへ

様々なキャンプイベントの企画やコーディネートも行う

きっかけはキャンプブームかも知れないが、働き方の多様化も言われている昨今で、キャンプを仕事にしたいと思っている人も多いと思う。

かく言う私も、このSPURKSというキャンプメディアを始めている。

これからキャンプを仕事にしようと思っている人に何かアドバイスはありますか?

「『キャンプ職業案内』という本を出版する時に、本当に色々な『キャンプを仕事にする人』を取材しました。キャンプに携わる仕事は本当にたくさんあります。そして誰でもできます。大切なのは『自分が何をやりたいか』『自分がどういう風になりたいか』。僕はフリーランスという形を選びましたが、フリーランスになりたいのであれば自分の特色や強みを光らせていかなければいけないし、そういったことが苦手な人であればキャンプ場で働く、ショップで働く、メーカーに務めるのも、キャンプに携わる立派な仕事だと思います」

「キャンプに関わりたい」という強い気持ちを持ち、自分の特性に応じて職を選べば、キャンプを仕事にすることは間違いなく出来ると佐久間さんは言う。

焚き火マイスター猪野正哉さんに取材する佐久間さん

著書で色々なキャンプに関わる仕事に触れた中で、佐久間さんが面白そうな仕事だと感じたのは「キャンプギア開発」。

「自分が作ったギアがキャンパーに愛され、フィールドで大切に使われているのを見ることができたら、この上ない喜びだと思います」

佐久間さんの著書「キャンプ職業案内」

佐久間さんがキャンプを仕事にする上で大切にしていることは何ですか?

「お金です。…と言うのは冗談ですが(笑)。キャンプの仕事に限ったことではないですが『人との出会い』『ウソはつかない』ということを大切にしています」

今までやった仕事の中で思い出に残っていることは何ですか?

「トレファクスポーツさんと一緒に企画した、思い入れはあるが使わなくってしまったり、壊れてしまったテントやタープをアップサイクルしてエコバッグにするという企画です。キャンパーであれば誰しもが持っている愛情のあるギアが『形を変えて持ち続けられる』というコンセプトも良かったし、SDGsにも合った企画だったので今でも思い出に残っています」

佐久間さんのこれから。そして「キャンプを仕事にする」ということ

これまで色々なキャンプの仕事をしてきた佐久間さんに、今後の展望を聞いてみた。

佐久間さんは今後どういった形でキャンプに携わっていきたいですか?

「今後の展望や目標としては、自分たちのキャンプ場を作ることです。キャンプが持つ魅力を最大限に引き出せる形だと思います。自分がキャンプをして惹かれた魅力を多くの人に味わってもらいたい。ありのままの自然を満喫できる、自然と対峙して自己内省できるようなキャンプ場を作りたいです」

生涯キャンプの魅力を伝える仕事をしていきたい。とも語っていた。

佐久間さんは「自分じゃなきゃいけない」と思ったことを、仕事にしてきたタイプのように感じた。キャンプ業界の様々なジャンルの人と接してきた佐久間さんにしか作れないキャンプ場がきっとあるに違いない。

今回、佐久間さんに話を聞いて、「キャンプを仕事にする」ことは誰でもできることだと思った。

キャンプイベントの企画を考えるのも面白い。キャンプ場で働くのもいい。来たお客さんが笑顔で帰って行っただけでもきっと嬉しいだろう。自分が開発したギアがキャンパーに長く愛されるものになるかも知れないし、自分が書いた記事が誰かのキャンプライフに大きな影響を与えることだってきっとある。

大切なことは自分が何をしたいか、何ができるかを知ること、そしてその中でいかに喜びを見出せるかということだ。

それが出来れば、あなたも将来キャンプで”メシ”を食っていけるかも知れないし、キャンプを仕事にせずとも、今目の前にある仕事に対する気の持ち方が変わり、より充実したキャンプライフが送れるようになるかも知れない。

日用品メーカーの営業マンとして働くも、キャンプをもっと広める仕事がしたいと脱サラ。日本全国の250箇所以上のキャンプ場をめぐるキャンプ旅を経て、ライターやモデル、イベントやコンテンツ企画など、キャンプにまつわる幅広い仕事を行っている。著書に『キャンプ職業案内』(三才ブックス)。自身が企画・デザインしたソロキャンパー向けロッジ型テント「ガレージテント」が全国のWILD-1にて発売中。

Related Post