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Life Style

北欧ガール ヤンニ・オルソンに聞く
北欧キャンプのすすめ

女優

ヤンニ・オルソン

2022.11.22

北欧キャンプ。

その言葉に憧れる人は多いかも知れないが、
北欧キャンプとは一体何かと答えられる人は意外と少ないかも知れない。

特に北欧のキャンプスタイルを意識していなくても、あなたが愛用しているキャンプギアが実は北欧発のブランドであったりする。

ヒルバーグやノルディスク、テンティピやフェールラーベン、トランギアやグレンスフォシュからモーラナイフ等々、北欧生まれのアウトドアブランドを挙げればキリがない。

そんな洗練された北欧発のブランドも北欧キャンプの魅力だが、
自然豊かな北欧に住む人たちは、キャンプや自然に対する考え方も日本のそれとは違い、北欧ならではなのだろう。

北欧には「自然享受権」という、誰しもが他人の土地であろうが、公共の土地であろうが、自由に踏み入り楽しむ権利がある。

旅行者でも誰でも、人の土地に踏み入り、ハイキングをしても良いし、キャンプをしても良いし、レイクアクティビティをしても良いし、ベリーやきのこを摘んだっていい。

もちろんそこには「土地の所有者に損害を加えることなく、植物や動物に敬意を払って行動する」という条件はつくが、逆を言うと、北欧に住む多くの人が自然に対する正しい接し方を知っていて、アウトドアが日常に根付いているということを意味するのかも知れない。

今回お話しを聞いたのは、北欧スウェーデンの大自然で育ち、幼少期の頃からアウトドアを日常的に親しみ、現在は日本でモデルや女優業、旅番組のレポーターなど多岐に渡り活躍する、北欧ガール、ヤンニ・オルソンさん。

ヤンニさんと焚き火を囲みながら、北欧キャンプのもつ魅力、フィーカという生活習慣、キャンプでのマナーなど、北欧のキャンプスタイルについて聞いてみた。

ヤンニさんがご馳走してくれた、スウェーデンワッフルとコーヒーを嗜んだその時間は、我々を北欧の大自然へトリップさせてくれた。

Chapter

  • 01.

    北欧アウトドアガール、ヤンニ・オルソン

  • 02.

    キャンプを楽しみながら自然にリスペクトを

  • 03.

    北欧のコミュニケーションタイム「フィーカ」

  • 04.

    キャンプでもおすすめ!
    伝統甘味「スウェーデンワッフル」を嗜む

  • 05.

    北欧キャンプにおいて大事なこと〜
    自然と共存するという気持ち〜

  • 06.

    日常に自然彩る北欧スタイルを

北欧キャンプ。

その言葉に憧れる人は多いかも知れないが、
北欧キャンプとは一体何かと答えられる人は意外と少ないかも知れない。

特に北欧のキャンプスタイルを意識していなくても、あなたが愛用しているキャンプギアが実は北欧発のブランドであったりする。

ヒルバーグやノルディスク、テンティピやフェールラーベン、トランギアやグレンスフォシュからモーラナイフ等々、北欧生まれのアウトドアブランドを挙げればキリがない。

そんな洗練された北欧発のブランドも北欧キャンプの魅力だが、
自然豊かな北欧に住む人たちは、キャンプや自然に対する考え方も日本のそれとは違い、北欧ならではなのだろう。

北欧には「自然享受権」という、誰しもが他人の土地であろうが、公共の土地であろうが、自由に踏み入り楽しむ権利がある。

旅行者でも誰でも、人の土地に踏み入り、ハイキングをしても良いし、キャンプをしても良いし、レイクアクティビティをしても良いし、ベリーやきのこを摘んだっていい。

もちろんそこには「土地の所有者に損害を加えることなく、植物や動物に敬意を払って行動する」という条件はつくが、逆を言うと、北欧に住む多くの人が自然に対する正しい接し方を知っていて、アウトドアが日常に根付いているということを意味するのかも知れない。

今回お話しを聞いたのは、北欧スウェーデンの大自然で育ち、幼少期の頃からアウトドアを日常的に親しみ、現在は日本でモデルや女優業、旅番組のレポーターなど多岐に渡り活躍する、北欧ガール、ヤンニ・オルソンさん。

ヤンニさんと焚き火を囲みながら、北欧キャンプのもつ魅力、フィーカという生活習慣、キャンプでのマナーなど、北欧のキャンプスタイルについて聞いてみた。

ヤンニさんがご馳走してくれた、スウェーデンワッフルとコーヒーを嗜んだその時間は、我々を北欧の大自然へトリップさせてくれた。

北欧アウトドアガール、ヤンニ・オルソン

北欧アウトドアガール、ヤンニ・オルソンさん

北欧スウェーデン出身のヤンニ・オルソンさんはVOLVOの本社があることでも有名なヨーテボリ生まれ。

「ヨーテボリは港町です。でも少し離れれば森があって、山があってと大自然に囲まれた環境で、アウトドア好きのお父さんやお兄さんの影響もあって、物心がついた頃からキャンプや自転車、ハイキングや釣りやカヌーと、たくさんのアウトドアに親しんできました。」

ヤンニさんのアウトドアリテラシーの高さは幼少期から培われたのだろう。
そんなヤンニさんが日本に初めて訪れたのは学生の頃で、アウトドア好きなお兄さんに誘われてバックパッキングで来たのが最初だったそう。

「初めて日本に来た時に、日本の自然や、京都や奈良などの寺院などを訪れたのですが、古い文化と現代の文化が共存する日本に感動しました。帰国後いつか日本に住みたいと思い、スウェーデンの大学で日本語の勉強を始めました。」

ヤンニさんのギア。長く使えるものが厳選されている。

ヤンニさんの魅力の一つにその行動力がある。
その後、日本の大学留学を経て、一度は母国スウェーデンに戻り働くも、好奇心旺盛なヤンニさんは刺激を求め、再び日本へ戻ってきた。

「日本に留学していた時にスカウトされたんです。そのツテもあって、日本でモデルや女優、旅番組のリポーター等のいわゆるタレント業を始めました。」

持ち前のルックスに語学力の高さ、天性の明るさも相まって、日本での仕事も着実に増えていった。今では、ヤンニさんのアウトドア好きが口コミで広がり、タレント業が派生してアウトドア関係の仕事も多く声がかかるようになり、忙しい毎日を送っている。

日本でのアウトドアブーム。アウトドア大国、北欧スウェーデン出身のヤンニさんの目には、今のこの日本のキャンプ事情はどう映っているのだろうか。

ヤンニさんに本場の北欧キャンプのことを聞くことによって、我々キャンパーが憧れる北欧のキャンプスタイルの魅力とその秘密を紐解くことができるかも知れない。

キャンプを楽しみながら自然にリスペクトを

ヤンニさんの直火スタイル。トナカイの皮は地面からの冷気を遮る効果がある事と、その座り心地の良さ、また雰囲気も良いため愛用している。

冒頭にも言ったが「北欧キャンプとは一体何か」をはっきりと認識している人は少ないかもしれない。

幼少期から北欧の大自然で過ごし、アウトドアがいつも身近にあったヤンニさんに「北欧キャンプとは一体何か」を聞いてみた。
「北欧キャンプが何かを一言で表すのは難しいですが、北欧の人たちは、キャンプを目的とはしていないんですよね。カヤックしてその途中でキャンプしたり、トレッキングや登山をするその途中の拠点としてキャンプをしてるんです。」

日本の今のキャンプシーンにおいては、キャンプに行くことだけを目的にしている人も多いと思う。もちろんスタイルなので、それは間違いでは決してない。ただ、北欧では目的ではなく手段としてキャンプをする人が多いとヤンニさんは言う。

「キャンプに行くぞ!って感じではないんですよね。アウトドアが日常にあり、キャンプがアウトドアやアクティビティの行程のひとつなので、私もそうなのですが、荷物は極力最低限の持ち物になります。自ずとシンプルなスタイルになるのかなと思います。」

フェールラーベンのバックパック。荷物はこの中に収まる量しか持っていかないことが多いそう。

北欧では都市と自然の距離が近く、キャンプが特別なものではないのかも知れない。日常的にアウトドアやキャンプを楽しんでいる人、アウトドアが生活の一部になっている人が多いと言う。

「スウェーデンの人口は東京の人口よりも少ないのですが、面積は日本より広いんです。人口に対して自然の占める面積が大きいから、本当に大自然の中でゆっくりできるんですよね。」

日本だとせっかく休みの日に都会の喧騒を離れてキャンプに行っても、混雑していることも少なくない。キャンプ場の予約ですら一苦労なくらいだ。

北欧にももちろんキャンプ場はあるが、キャンプ場を利用せずに、自然の中で自由にキャンプをするのが定番なキャンプスタイルだそう。

「北欧では誰もがルールとか関係なく自然を守っていますね。みんなが自然に対してリスペクトを持ってます。自然に負荷をかけないようするのが当たり前で、自然を守りながらキャンプを楽しんでいます。」

キャンプ場に落ちていたゴミを拾うヤンニさん。自分達がお邪魔した自然を綺麗にして帰るのも北欧スタイルだ。

日本では今のキャンプブームに伴って、ルールや規則が複雑になり、細分化せざるを得なくなっているが、日本人もみんなそんな北欧人の意識を持っていれば、そんな複雑なルールなど必要ないのかもしれない。

我々が北欧キャンプから学ぶべきことは、キャンプを楽しみながらも自然にリスペクトを持ち、自然の中にお邪魔しているということ、負荷をかけないこと、そしてそのために必要な知識をつけることなのかもしれない。

北欧のコミュニケーションタイム「フィーカ」

皆さんは「フィーカ」という言葉をご存知だろうか。

フィーカとは北欧文化の一つでいわゆるティータイムのことを指すのだが、
ヤンニさんに聞くと日本でいう「お茶をする」とは少しその意味合いが異なるようだ。

「スウェーデンでは皆よくコーヒーを飲むのですが、フィーカはただのコーヒータイムではないんですよね。生活習慣の一つなんです。家族や友達や同僚と時間を共有するコミュニケーションツールの一つでスウェーデン人にとっては必要不可欠なきちんと確保された時間なんです。」

レンメルコーヒー用に粗挽きで挽かれたコーヒー粉は専用のレザーケースに入れている。

聞くと、学校でも会社でも必ずフィーカの時間が設けられているそうだ。
フィーカの時間に勉強やら仕事をしようものなら、周囲から注意されると言う。我々日本人には少し驚きではあるが、それだけ、北欧、スウェーデンの人にとってフィーカとは特別な時間なのだろう。

「例えば男性から『デートしない?』と言われると、敷居が高いと言うかちょっとこちらも構えてしまいますが、『フィーカしない?』と言われたら、『良いね!フィーカしよう!』ってなったりします(笑)。」

美味しいレンメルコーヒーを淹れるコツはコーヒー粉をたっぷり入れることだという。

フィーカの時間にリラックスする習慣が根付いているから、気負わず円滑なコミュニケーションが取れるのかも知れない。

「キャンプで焚き火を囲んでコーヒーを飲んだりするのも、立派なフィーカタイムです。家族や友人とキャンプでフィーカすることも北欧のキャンプスタイルだと思います。ソロキャンプでフィーカでも良いですしね(笑)」

特に何をするわけではない、コーヒーを飲んでワッフルを食べて、焚き火や暖炉を見ながらリラックスするだけ。

我々の感覚だと普通の休憩に思えてしまうかも知れないが、北欧人にとってのフィーカとは、気持ちをリラックスするためであったり、人との距離を縮めるための必要不可欠な時間なのだろう。

キャンプでもおすすめ!
伝統甘味「スウェーデンワッフル」を嗜む

そんなフィーカに欠かせないのはコーヒーはもちろんだが、ヤンニさん曰く、スウェーデンワッフルも不可欠だそう。

スウェーデンワッフル?
我々がよく知るベルギーワッフルとは異なるのだろうか。
「全然違います(笑)。まず見た目で言うとベルギーワッフルは厚みのある四角なのに対して、スウェーデンワッフルは薄くてハート型なんです。甘味も生地にはなくて、ブルーベリーやジャムや生クリームで甘さをトッピングするのがスウェーデンワッフルの特徴です。」

クローバー型のワッフルアイロンで焼き上げ、切り込みで一人前に切り分けると可愛いハート型になる。ヤンニさんが愛用しているワッフルアイロンは、本場スウェーデンでも伝統的に愛されている「スケップシュルト」のものだ。

ヤンニさんが最近購入したスウェーデン伝統のワッフルアイロン

「そもそもスウェーデンのコーヒーは濃いんですよね。ザ・ブラックって感じで子供の頃は私も苦手でした(笑)。大人になってコーヒーを飲めるようになってくると、その濃いコーヒーと甘さをトッピングしたワッフルが本当よく合うんですよね。」

スウェーデンワッフルの作り方は、その家庭ごとに異なったりはするが、大まかには、まずバターを火にかける。溶けたら火から下ろして冷ます。

ボウルに小麦粉とベーキングパウダー、塩を入れて混ぜる。そこに半量の牛乳とよく溶いた卵を入れて滑らかになるまで混ぜる。

そこに残りの牛乳と溶かしたバターと水を入れ、さらに混ぜる。

「作り方はシンプルですけどキャンプ場だと結構大変ですよね(笑)。泡立て器があると楽だったりするので、ここまで家でやって水筒などのボトルに入れてキャンプに持ってきても良いです。スウェーデン人もよくそうしてますよ。」

あとはワッフルアイロンを火にかけバターを満遍なく馴染ませたら、先程の生地を流し入れ、あとは黄金色になるまで両面焼くだけ。

「スウェーデンは3月25日がワッフルの日なんですよ。日頃からみんなよく食べていますが、この日は昔からの習慣でスウェーデン中でワッフルが食べられます。(火にかけたワッフルアイロンを開けて)はい!完成です!あとはお好みでベリーや生クリームを乗っけて、うん!美味しい!」

確かに薄めの生地はサクサクしていて、生クリーム、ベリーとの相性も良い。ハート型の形も見た目の可愛らしさもさることながら、サイズ感もちょうど良く何枚でも食べられる。

焼きたてのスウェーデンワッフルと淹れたてのコーヒー。不思議と会話も弾む。食べる、飲む、話す以外は特に何もしない、贅沢にも感じられるこのフィーカタイム。

「自然の中でのんびりとリラックスした時間を過ごすのでキャンプにもピッタリ!相性がGoodです!」

北欧キャンプにおいて大事なこと
〜自然と共存するという気持ち〜

スウェーデンの学生の夏休みは2ヶ月半近くあるという。親御さんの休みもそれに伴って長かったりするようだ。

「多分わざとなんですよね(笑)そんだけ長いと飽きてくるんです最後の方は早く学校行きたい!仕事したい!って気持ちになるんです。」

ヤンニさん自身も子供の頃はおじいちゃん、おばあちゃんの家に1ヶ月行ったり、キャンピングカーでデンマークに行き1ヶ月間以上キャンプをしたり、小学生にあがってからは家族で2ヶ月間サマーハウスで過ごしたりと、自然の中での夏休みを存分に楽しんだ。

「今思えばその時に色々なアウトドア、キャンプのマナーを教わったり、自分たちで感じたりして学んでいたと思います。勉強をしたわけではないけど、少しまとまった期間、テレビも電波もない場所の中で生活をすることで自然と身についてきたことは多いです。」

その頃、焚き火もよくしたと言う。スウェーデンでの焚き火は今でも直火が多いという。

「直火をするときは石を拾ってきて、日本で言うところのカマドを作るんです。あまり大きな焚き火はせずに、必要なだけのサークルにして。そうすれば片付けも楽ですし。」

北欧キャンプにおいて大事なことは「痕跡を残さないこと」だとも言われている。
どこでもキャンプをして良い代わりに、キャンプをした後はそこでキャンプをしたという痕跡すら残さないような習慣を北欧ではみんなが当たり前のように持っている。

最低限の設備であれば、片付けも楽だ。

昨今、日本でもできるキャンプ場がどんどん減ってきている直火に関しても、北欧キャンパーの多くが直火好きなのに対し、そこに「焚き逃げ」などの問題が出てこないのも、アウトドアリテラシーの高さ所以なのだろう。

「石鹸や食器用の洗剤も自然派なものが好まれて使われていますね。ゴミなんかももちろん置いていかず全て持ち帰る。自然と持ち物も減ってオススメですよ(笑)。」

北欧キャンプというとそのオシャレな部分にフォーカスが当たりがちだが、そこには自然と共存するための気持ちと知恵と知識が詰まった、ミニマムかつ自然に優しいキャンプスタイルなのだろう。

日常に自然彩る北欧スタイルを

今回ヤンニさんの話を聞いて、コーヒー、フィーカ、アウトドアアクティビティ、キャンプがブームでなく、日常を彩るものとして生活に根付いている。北欧キャンプに対してそんな印象を受けた。

常に自然が隣にあるから、自然とともにリラックスすること、自然にリスペクトを持ち、大切にすることが北欧の人たちには根付いてるのだろう。

フィーカを楽しんで、仲間とのコミュニケーションを図る。一度完全にリラックスして、仕事の効率を上げる。アウトドアの知識を知って、体験して、自然からエネルギーをもらう、そしてそれが日常の活力になる。

世界的にみても自然が豊かな日本。

自然にリスペクトを持ち自然と共存し合う北欧キャンプは、決して手の届かないスタイルではなく、我々の住む日本も実は近しい環境に恵まれていて、そこに北欧キャンプの要素をうまく取り入れることができたなら、それは理想のキャンプスタイルになり得るかも知れない。

スウェーデン出身のタレント、主にレポーター、アウトドアライター、モデル・女優(SWF2019助演女優賞受賞)として活躍している。
撮影現場だけでなく、時間があれば自身が愛する自然の中で過ごすことが多い彼女は「スウェーデンのアウトドアガール」というニックネームがつけられた。NHKワールドにもレギュラー出演しており、番組内では日本の山や海、そして地方を巡るヤンニの冒険の数々を紹介している。アウトドア好きが講じて、温泉ソムリエ、サウナ・スパ健康アドバイザーの資格も取得。
また、スウェーデンで培った経験を活かし、日本と北欧のアウトドアシーンについて、定期的に雑誌のコラムを執筆するなど、活躍の場を広げている。株式会社フリー・ウエイブの専属タレントとして東京を拠点に活動中。

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