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知夫里島・島津島キャンプ場

フォトグラファー/キャンプコーディネーター

猪俣 慎吾

2022.6.7

Instgram等のSNSが一般化され、またデジタルカメラや携帯カメラの技術の進化から、「1億総カメラマン時代」と言われている今。

特別な知識はなくても、誰でもそれなりの写真は撮れるようになっていることは否めない。

素人、アマチュアとプロの違いは何なのか。
プロのカメラマンに求められるものは何だろうか。

今回はキャンプ雑誌などでも活躍するプロのカメラマン猪俣慎吾さんに、自身の趣味でもあるキャンプで撮った写真をもとに、これまで行ったキャンプ場の中でも絶景のキャンプ場について、旅路を振り返りながら語ってもらった。

本当の絶景とはなにか、映えとは何なのかを、カメラマン・猪俣慎吾が撮るキャンプの写真を見ながら、感じてもらいたい。

Chapter

  • 01.

    息子の一言からはじまった隠岐諸島への旅

  • 02.

    無人島の静寂と絶景がそこにはあった

  • 03.

    この地を「夕陽の国」と呼んだ

  • 04.

    隣島、島後島でハンモック泊

  • 05.

    ウユニ塩湖のような絶景があった

  • 06.

    ぜひ、隠岐諸島へ行ってもらいたい。

Instgram等のSNSが一般化され、またデジタルカメラや携帯カメラの技術の進化から、「1億総カメラマン時代」と言われている今。

特別な知識はなくても、誰でもそれなりの写真は撮れるようになっていることは否めない。

素人、アマチュアとプロの違いは何なのか。
プロのカメラマンに求められるものは何だろうか。

今回はキャンプ雑誌などでも活躍するプロのカメラマン猪俣慎吾さんに、自身の趣味でもあるキャンプで撮った写真をもとに、これまで行ったキャンプ場の中でも絶景のキャンプ場について、旅路を振り返りながら語ってもらった。

本当の絶景とはなにか、映えとは何なのかを、カメラマン・猪俣慎吾が撮るキャンプの写真を見ながら、感じてもらいたい。

息子の一言からはじまった隠岐諸島への旅

隠岐諸島・知夫里島へは七類港からフェリーで。
知夫里島の薄毛沖にある孤島、島津島。

猪俣さんはキャンプ場の決め方も独特だ。

「息子とやりたいこと、見たいものを決め、その近くのキャンプ場を探しています。」

過去にフランス、フィンランド、スコットランド、ニュージーランドをバックパックでキャンプをしながら旅をし、海外のアウトドア文化に触れ、猪俣さんは海外と日本のアウトドア文化の違いを感じたようだ。

「海外でもキャンプという文化はあるんですが、旅の途中であったり、登山の停泊するためであったり、キャンプが手段なのに対し、日本はキャンプが目的になっています。別にそれが悪いとは思いませんが…」

そういった海外のアウトドア文化に感化された猪俣さんは、極力行き先・やることを決めてからキャンプ地を決めている。

隠岐諸島の知夫里島、島津島に決めたのも、息子さんの「寝台列車に乗ってみたい」の一言からだ。

寝台特急「サンライズ出雲」に乗って米子まで、七類港からフェリーに乗って隠岐諸島・知夫里島へ※。

※サンライズ出雲を利用する場合、9時30分発の1日1本の知夫里行きフェリーに間に合わないため、
宿泊施設に1泊する必要があります。
その日に知夫里島に行くには深夜バスなどを利用し、9時前に七類港にいる必要があります。

大人でもワクワクするルートだ。

息子さんの「寝台列車に乗りたい」と猪俣さんの「無人島でキャンプがしたい」が合わさったプランがここに完成した。

無人島の静寂と絶景がそこにはあった

この日、島にいるのは牛たちと猪俣さん親子だけだった。

知夫里島から島津島のキャンプ場へは遊歩道を歩いて入るしかないため、息子さんと荷物を手分けをし、ザックを背負い、期待に胸を躍らせ島を渡る。不思議なもので期待が高まるほど重いザックは軽く感じさせる。

島津島に入るとそこには無人島ならではの静寂と絶景がそこにはあった。

無人島にいるのは猪俣さんと息子さん、あとは放牧されている牛だけだ。
不安になるくらい牛がそこら辺を普通に歩いている。

寝ている時に近づいてきたらどうしよう、子供に何かあったら…
普段であればそんな不安に襲われそうだが、大自然は非日常を日常に感じさせることをも手伝う。

牛と触れ合いながら、拠点を探す。
人気キャンプ場で繰り広げられているサイト争いがここにはない。
小高い丘には牛がいたため、さすがに牛の近くでキャンプをするのは危険が伴うので、丘の下の浜辺の近くに行くと、透き通るような青い海が眼前に広がる、絶好のスポットがそこにはあった。

二人は今夜の寝床をここに決めた。

荷物を背負って行かなければならなかったため、はじめからタープ泊かハンモック泊にしようと決めていた猪俣さん。目的地に応じてキャンプスタイル、持って行く物を変えるのも旅慣れした猪俣さんのスタイルだ。

この地を「夕陽の国」と呼んだ

海に入る夕日は絶景だった。

日没後の数十分、光源となる太陽からの光線が日中より赤く、淡い状態となり、色相がソフトで暖かく、金色に輝いて見える状態になる時間帯をマジックアワーという。

陽が落ちてきてマジックアワーに入ると、関東出身の猪俣さんにはあまり馴染みのない、夕陽が海に沈んでいく絶景がそこにはあった。

「関東に住んでいると、海に入る夕日を見たことがなく…。関東に住んでいる方には特に行ってもらいたいですね。」

そのあまりの美しさに猪俣親子はこの地を「夕陽の国」と呼んだ。

隣島、島後島でハンモック泊

連絡船で島後島へ。
立木キャンプ場

島津島、知夫里島をあとにし、猪俣親子は連絡船に乗り込み、島後島へと移動した。

有名な隠岐諸島ではあるが、意外と勘違いされていて、隠岐の島という単独の島は存在せず、隠岐の島と勘違いされている島は、隠岐諸島の中で最も面積が広く、主島である島後島のことを指す。

「玉若酢命神社」、「八百杉」、「壇鏡の滝」、「那久岬」、「ローソク島」など観光名所が多い島後島だが、島内には実は絶景を拝むことが出来るキャンプ場も多い。

いくつかあるキャンプ場の中で、猪俣親子は港からも近い立木キャンプ場を2泊目のキャンプ地とすることにした。

ハンモックに揺られながら、海を眺めて、波の音を聞く。

眼前に広がる絶景に、猪俣さんは再び、時間がゆっくり流れていくのを感じた。

ウユニ塩湖のような絶景があった

油井前の洲

立木キャンプ場から車を西に走らせると、油井前の洲という絶景の夕陽が見れるスポットがある。

油井前の洲は島後で最も広い波食棚を形成しており、約2000年前、日本海がまだ湖だった頃の地層が日本海の波と風による浸食作用によってできたものだ。

夏場は水面下に沈んでいるが、冬季の海面低下時にはまるで浮き出たようにその姿を現す。水平線に落ちる夕日が反射したその眩さはまさに南米のボリビアのウユニ湖そのもの。地面に映し出された夕空の美しさに猪俣さんは言葉を失った。

ぜひ、隠岐諸島へ行ってもらいたい。

隠岐諸島への行き方は、関東圏からであれば新幹線もあるし、飛行機で行く手段もある。

断然そっちの方が早いし楽かも知れない。

もし、猪俣さんが息子さんと相談せず、キャンプ場を選んでから行き方を決めるスタイルであれば、この寝台列車に乗るルートを選んでいなかっただろう。

息子さんの「寝台列車に乗りたい」と猪俣さんの「無人島でキャンプがしたい」が先にあったから、この旅路になったのだ。

旅路の先には絶景がある。

遠回りして辿り着いた場所で、水平線に沈む夕日を眺めながら、ゆっくりと流れる島タイムを感じる。

絶景キャンプとは旅路を含んだその先にあるものなのかも知れない。

猪俣さんの絶景写真を見て、そう感じた。

今回の旅の目的のひとつ、寝台特急「サンライズ出雲」。息子へのご褒美です。

キャンプが趣味のフォトグラファー。7 年間写真スタジオに勤め、その後独立。フォトグラファーとして活動する傍ら、キャンプコーディネーターとしても活動している。アウトドアグループ「KIPPIS」主宰。日本オートキャンプ協会インストラクター。星空案内人®︎。10 月に『絶景CAMPGUIDE』(JTB パブリッシング)を出版したばかり。

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