伊豆の入り口函南町に昨年の12月に
彗星の如くオープンしたキャンプ場「negura campground」。
いつかは自分のキャンプ場を持ちたい!
そう思っている人は多いかもしれないが、negura campgroundのオーナー渡部竜矢さんは脱サラをして見事その夢を叶えた人だ。
キャンプ場からは富士山、函南・三島・沼津の街並みや夜景、駿河湾が望める、まさに絶景と呼べるロケーション。
開拓前からSNSで徐々に話題となり、その夢に共感する人が増え、クラウドファンディングでは約1,200万円の支援金を集めた。
開拓作業においても、クラウドファンディングの支援者、SNSで知った人、近所の方々、と多くのボランティアの方がneguraの開拓作業に携わっている。
多くの人を魅了し続けている、これから伊豆を、日本を代表するキャンプ場の一つになるであろうnegura campgroundの魅力と、数々のドラマを生み続けているオーナーの渡部さんの底知れぬ人間力に今回は迫ってみた。
Chapter
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01.
This is negura campground
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02.
林道を走り尽くしてようやく見つけたキャンプ場
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03.
クラウドファンディングの成功から開拓作業へ
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04.
渡部竜矢が考える理想のキャンプ場
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05.
直火へのこだわり
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06.
negura campgroundのこれから
伊豆の入り口函南町に昨年の12月に
彗星の如くオープンしたキャンプ場「negura campground」。
いつかは自分のキャンプ場を持ちたい!
そう思っている人は多いかもしれないが、negura campgroundのオーナー渡部竜矢さんは脱サラをして見事その夢を叶えた人だ。
キャンプ場からは富士山、函南・三島・沼津の街並みや夜景、駿河湾が望める、まさに絶景と呼べるロケーション。
開拓前からSNSで徐々に話題となり、その夢に共感する人が増え、クラウドファンディングでは約1,200万円の支援金を集めた。
開拓作業においても、クラウドファンディングの支援者、SNSで知った人、近所の方々、と多くのボランティアの方がneguraの開拓作業に携わっている。
多くの人を魅了し続けている、これから伊豆を、日本を代表するキャンプ場の一つになるであろうnegura campgroundの魅力と、数々のドラマを生み続けているオーナーの渡部さんの底知れぬ人間力に今回は迫ってみた。
This is negura campground
negura campgroundは2022年6月現在、「tsudoi」「mujina」「komichi」「kokage」の4つのサイトが開放されている。
一番人気なサイトはやはり、富士山、函南・三島・沼津の街並みや夜景、駿河湾が望める「tsudoi」「mujina」であり、neguraを象徴する絶景サイトだ。
フリーサイトなため、どうしても見晴らしの良い端側に人が集まりがちだが、逆にその中央にスペースが空くことで、キャンプに来た子供たちが、サッカーをしたり、モルックをしたりと自由に過ごしている。
mujinaサイトからさらに一段上がると林間サイトの「komichi」、さらに一段上の「kokage」がある。
「私がお客さんとしてキャンプをするならkomichi、kokageを選ぶと思います(笑)」
渡部さんもお気に入りのこちらの林間サイトも実に雰囲気がよく、全面直火が可能で、ソロキャンパーであったり、静かに過ごしたい人、自然を感じながらキャンプをしたい人にはうってつけの玄人向けのサイト作りになっている。
富士山あり、夜景ありの絶景と自然を満喫できる林間の魅力の両方を併せ持つ稀有なキャンプ場「negura campground」。
渡部さんはどのようにしてこの地に巡り逢ったのだろうか。
林道を走り尽くしてようやく見つけたキャンプ場
北海道美幌町出身、現在40歳の渡部さんはキャンプ場をオープンする前は東京の金融系のシステムを作る会社でプロジェクトマネージャーとして働いていた。
もともとバンド活動をしていて、その時に小さなフェスに出演した際にテントで寝泊まりしたことがキャンプにハマったきっかけだと言う。
ある時飲み会で友人たちと話している時に、函南町のバブル期に建てられた別荘が安く売りに出されていることを知り、キャンプや釣りなどを通じて自然が好きだった渡部さんは、翌日には内見に行き、移住を決心し、3週間後には函南町に越してきた。
「決断は早い方なんです(笑)」
そんな生活を続ける中で函南町で仲良くなった同年代の人たちが、お金に縛られず、好きなことを仕事にして毎日を楽しんで過ごしている様子を見て、渡部さんもいつかは好きなことを仕事にしようと考えたそう。
好きなキャンプで色々なキャンプ場に行く中で、「いつかは自分の理想のキャンプ場を作りたい」「自分だったらもっと良いキャンプ場を作れるのに」と考えるようになり、休みの日になると、伊豆の林道という林道を走り、キャンプ場の土地探しをするようになった。
林道に入っていき、良いなと思ってはGoogle Mapにピンを付ける、そんな作業をひたすら続けていると、気付けば渡部さんのGoogle Mapはピンだらけになっていた(笑)
候補地を探す中で、車で入った林道が行き止まりとなりUターンが出来ずに200mバックするようなこともあった。
「その頃は開けた土地が全てキャンプ場に見えてました(笑)」
探していく中で、ここは良いのではないかと思った土地でも、調べてみると「農地」などのキャンプ場に出来ない地目であったり、所有者が不明になっていたりと、肩を落とす日々が続いたが、根気強くキャンプ場の候補地を探し続けていたところ、高台にあるこの場所に巡り合った。
この土地を見つけた瞬間、渡部さんは「ここしかない!」と思った。
もともと牧草地だったこの地は、渡部さんが訪れたときは、草は伸び放題、木々も生い茂っていたが、「この辺りの木を切れば素敵な景色が広がるな」「ここを整地すれば良いサイトになるな」とイメージがすぐに湧いたという。
クラウドファンディングの成功から開拓作業へ
キャンプ場にするなら絶対にここが良い。ここなら最高のキャンプ場になるに違いない。
偶然にもこの土地の持ち主は渡部さんが伊豆で一番仲良くしている友人の同級生の家のものだった。
「その時は運命を感じましたね。」
渡部さんは東京での仕事を辞め、キャンプ場開設へ一気に舵を切った。
渡部さんは土地探しの段階からTwitterで日々の状況を発信し、キャンプ場探しの苦労やこの土地を見つけた感動をリアルタイムで投稿していた。
渡部さんの人間性と「キャンプ場探し」というドラマに共感する人がその時すでに数多くいたので、「このタイミングしかない!」とクラウドファンディングに挑戦することにした。
半信半疑で始めたクラウドファンディングだったが、蓋を開ければ、目標金額140万円をわずか3時間で達成し、開始から1週間で450万円、終了時には実に1,329人の支援により、最終的にはこの手のクラウドファンディングでは異例の11,905,500円の資金を集め、その年の「CAMPFIRE クラウドファンディングアワード2021 中部エリア賞」を受賞した。
ここまでの支援を得られた要因は、そのドラマ性はもちろんあるが、渡部さん自身がもともとキャンプが好きで、理想のキャンプ場像をしっかりと描けていたこと、コンセプトがはっきりとしていたことも大きく、その過程を一緒に作り上げていきたいと多くのキャンパーが思ったからではないだろうか。
キャンプ場開拓という面でも、渡部さんのまわりには人が集まってくる。
開拓中の作業も覗かせてもらったが、この日はtsudoiサイトのトイレ、炊事場からmujinaサイトへのアクセスを良くするための階段が1日であっという間に出来上がっていった。
作業を見ていると、チームワークも手際も良い。
地元の業者の人がneguraの噂を聞きつけ手伝いに来てくれることも多いという。
この日も近所の庭木屋さんが木に登り、剪定を行っていた(笑)。
多くのボランティアの人たちによって、より魅力的なキャンプ場に変化していくnegura campground。
開拓作業についてはプロの意見を聞いたりするが、最終的な美観や仕上がりのビジョンについては絶対に意見は譲らないと言う。
渡部さん自身が仕上がりのイメージをはっきり持っていることで現場がうまく回っている印象を受けた。
渡部竜矢が考える理想のキャンプ場
渡部さんがキャンプ場作りをしていく上で、参考にしたキャンプ場はどこだったのだろうか。
「道志の森キャンプ場や浩庵キャンプ場、西伊豆町のオートキャンプ銀河はもともと好きでよく行っていたこともあり、その3箇所からは影響を受けていると思います」
自然の雰囲気をそのまま生かしたワイルド感のある「道志の森キャンプ場」、本栖湖と富士山が望める絶景キャンプ場の代表格「浩庵キャンプ場」、すれ違えないような林道を15分くらい登っていかないと辿り着けないという自然のど真ん中にありながら、トイレは綺麗で炊事場はお湯も出るというワイルドさと高規格を兼ね備えた「オートキャンプ銀河」。
これら3箇所のいいとこ取りをしたような、伊豆の絶景と自然をそのまま生かしたワイルド感と水場などの清潔さを両立したキャンプ場は作れるはずだと渡部さんは確信している。
「tsudoi」「mujina」「komichi」「kokage」、この4サイトについては渡部さんがイメージしたサイトに仕上がってきたようだ。
今後は未開拓のエリアをさらに開拓していき、「negura campgroud」という理想のキャンプ場は完成すると渡部さんは言う。
直火へのこだわり
negura campgroundは基本直火がオッケーなキャンプ場だ。
「kokage」「komichi」サイトは全面直火が可能であり、「tsudoi」「mujina」サイトには専用のピットが用意されていて、そこで直火をすることが可能になっている。
直火禁止のキャンプ場が今やほとんどになってきている中で、渡部さんが直火にこだわる理由を聞いてみた。
「直火が好きだからです(笑)。言葉にすると難しいですが、原始体験というか、本来の焚き火の姿、魅力を感じられ、本能にグッとくる感じが好きで。直火をしたことがない人にもその感覚をneguraで味わってもらいたいと思ってます」
直火は何十万年も前から、「火を起こす」という、体を温めたり周囲の獣から身を守ったりするための行為だ。そんな命を守る瞬間の興奮や追体験を強く感じられるのは直火なのではないかと渡部さんは考える。
negura campgroundのこれから
キャンプでテントを立てることは言わば巣作りとも言える。
その巣作りを連想させる「寝ぐら」からこのキャンプ場は「negura campground」と名付けられた。
negura campgroundは今後どう進化していくのだろう。
元々バンドをやっていたこともある渡部さんは、今後はバースペースなども作っていき音楽好きな人も集まれる場をつくりたいという。
管理棟を設けたり、新しいサイトを作ったり、イメージはどんどん湧いてきている。
渡部さんが何かをしようとすると、
自然と人が集まってきて目的が実現できてしまう。
もともと神頼みであったりスピリチュアルなことに興味がなかった渡部さんだが、「negura campground」づくりを通じ、不思議な巡り合わせが次々と続いていて、何かそういったこともあるのではないか、と思うようになったそうだ。
渡部さん自身の人間的な魅力に惹かれて人が集まってきているのだろうが、明確なビジョン、的確に伝える発信能力、過去の経験を今に繋げる行動力。渡部さんのそういったところが多くの人が魅了される理由だと思った。
同い年の私もこの取材で多くの刺激を受け、一気に渡部さんのファンになってしまった(笑)。
これからnegura campgroundがどういったキャンプ場になっていくのか、とても楽しみだ。
富士山と駿河湾と夜景を見渡しながら直火ができる予約制フリーサイトのオートキャンプ場。 伊豆の入り口である函南町に位置し、都内からのアクセスも良い。 現在も開拓中のキャンプ場であり、2022年6月時点での進捗率は30%と、理想のキャンプ場づくりの経緯を各種SNSで発信している。