「バンライフ」は2010年代にアメリカで生まれた「VAN」と「LIFE」を掛け合わせた造語で、クルマを生活の中心とし、移動しながら旅や生活を楽しむライフスタイルのことを指す。
「車に乗って自由に旅をし、気に入った場所で生活を楽しむ」というシンプルで自然の温もりを近く感じることが出来るその生活様式はファッショナブルでもあり、近年日本でも注目が集まってきている。
木が張られた内装にオシャレなキッチン、可動式のテーブルに機能性のある棚、カーテンをつけて、ベッドに横たわりながら、バックドアを開けて絶景を前にパシャリ。そんなフォトジェニックなバンライフに憧れる人も多いかも知れない。
それらをDIYでやってしまう器用な人もいるが、作業スペースの問題だったり、道具の問題だったり、そもそも車にネジ打ち込むなんて出来ない!とそんなバンライフに尻込みしている人も多いだろう。
今回紹介する鈴木大地さんはそんなカスタムバンへの憧れを抱いている人たちの夢を叶えるバンライフビルダーの一人だ。人気キャンプインスタグラマーのYURIEさんの愛車サンシー号の内装を手がけたことでも知られている。
元々大工の仕事をしていた職人でもあり、海外のオシャレバンライファーのソレを彷彿とさせるセンスや独自のアイディアで、今バンライフ業界からも一目置かれている。
鈴木さんの作業拠点はリノベーションされた団地(UR)の一角にあり、その団地のDIYアドバイザーや管理人も兼務する。
今回はそんなバンライフビルダー・鈴木大地さんが今まで手がけたバンの中でも特に思い入れのあるバンを4点紹介してもらった。どのバンも鈴木さんの技術とセンスが光る。
Chapter
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01.
大工仕事の遠征がバンビルダーを始めるきっかけに。
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02.
夢が叶ったアメリカンスクールバスのバンビルド
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03.
すべてはこの一台から始まった「ベンツ トランスポーター」
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04.
依頼主は某有名企業の社長さま!?「トランスポーターT1」
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05.
まるで美術館!?三浦市の観光用のマイクロバスを蘇らせる
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06.
これからも依頼者の理想のバンライフをつくっていく
「バンライフ」は2010年代にアメリカで生まれた「VAN」と「LIFE」を掛け合わせた造語で、クルマを生活の中心とし、移動しながら旅や生活を楽しむライフスタイルのことを指す。
「車に乗って自由に旅をし、気に入った場所で生活を楽しむ」というシンプルで自然の温もりを近く感じることが出来るその生活様式はファッショナブルでもあり、近年日本でも注目が集まってきている。
木が張られた内装にオシャレなキッチン、可動式のテーブルに機能性のある棚、カーテンをつけて、ベッドに横たわりながら、バックドアを開けて絶景を前にパシャリ。そんなフォトジェニックなバンライフに憧れる人も多いかも知れない。
それらをDIYでやってしまう器用な人もいるが、作業スペースの問題だったり、道具の問題だったり、そもそも車にネジ打ち込むなんて出来ない!とそんなバンライフに尻込みしている人も多いだろう。
今回紹介する鈴木大地さんはそんなカスタムバンへの憧れを抱いている人たちの夢を叶えるバンライフビルダーの一人だ。人気キャンプインスタグラマーのYURIEさんの愛車サンシー号の内装を手がけたことでも知られている。
元々大工の仕事をしていた職人でもあり、海外のオシャレバンライファーのソレを彷彿とさせるセンスや独自のアイディアで、今バンライフ業界からも一目置かれている。
鈴木さんの作業拠点はリノベーションされた団地(UR)の一角にあり、その団地のDIYアドバイザーや管理人も兼務する。
今回はそんなバンライフビルダー・鈴木大地さんが今まで手がけたバンの中でも特に思い入れのあるバンを4点紹介してもらった。どのバンも鈴木さんの技術とセンスが光る。
大工仕事の遠征がバンビルダーを始めるきっかけに。
鈴木さんがバンライフビルダーになるきっかけとなったのは5年前に遡る。
「元々工務店に勤務していたんですよね。その頃から個人で大工仕事をするようになって、当時は八王子の方の自宅から都内に来ることが多かったんですけど、毎回の移動が大変なので、それなら車で寝られる仕様にすれば良いんじゃないか、と思ったのが最初のきっかけです。」
鈴木さんは、大工道具を詰めて、快適な睡眠も得られる車。そんなバン探しをしていく中で海外の「バンライフ」というライフスタイルがあることを知った。
「海外のバンライフをしている人のインスタグラムとか洋書とかを見漁っていたら、メルセデス・ベンツのトランスポーター、通称ベントラに出会うんですよね。そして、そのベントラが私のバンライフビルダーとしての最初の一台です。」
鈴木さんはベントラを手にし、海外のバンライフの洋書を参考に、自己流で内装を手がけた。
その内装の様子をInstagramにあげていくうちに注目が集まりだし、「私の車の内装もお願いしたい!」などのバンライフファーからの依頼の声が届くようになった。
そして本業の大工に加え、バンライフビルダーとしての人生がはじまった。
「ありがたいことに、自分がこの仕事をやるようになって程なくして、バンライフが日本でも注目され出したんですよね。今では、遠方の方だったり、インスタグラマーやYoutuberの方だったり、企業の社長さんなどからも依頼を受けるようになりました。」
現在では、半年くらい待ってもらうほど多くの依頼がきており、バンビルダーとしての仕事の方が本業になっているくらいだ。
夢が叶ったアメリカンスクールバスのバンビルド
まずはじめに紹介するのは、鈴木さんの最新のバンビルド、ど迫力のアメリカンスクールバスだ。
なんとこの車は鈴木さんの所有車だと言う。バンというには収まらない大きさのこのバスに乗って、さまざまな場所を巡ってるのにまず驚きだ。
今回のインタビューもこちらのスクールバスの中で行われた。
「この車は本当に夢だったんですよね。僕の知る限り日本ではまだスクールバスをキャンピングカー仕様にしている人はいないです。バンライフが流行ってきているので、誰かがやるかもしれない。誰かがビルドする前に僕がやってみたい。そう思って始めました。」
鈴木さんのスクールバスはロサンゼルスのインターナショナル社が出しているスクールバスだ。十分大きいがこれでもショートボディーだという。
「自分で8ナンバーに変更して名古屋から乗って帰ってくるときはさすがにドキドキしました(笑)」
日本に入ってきたときはまだ、座席なども全てそのまま残された状態で、それらをバラすところから作業が始まったそうだが、鈴木さんはこの内装をわずか1ヶ月で完成させたという。
「このときは完全にゾーンに入ってましたね。寝てても作ってる感じでした(笑)」
階段が棚になっていたり、ソファーをトランスフォームするとベッドになったりと色々な仕掛けが織り込まれているが、この車の内装で大変だったところはどこだろうか。
「今までは大きくても小さくてもやることは変わらないだろうと思っていましたが、実際にこのスクールバスの内装を初めてみたら、全然違いましたね。壁板を張っていても、いつ終わるんだろうって(笑)。あと、木材が高騰しているので、材料費の面でも想定外で大変でした。」
インタビュー中も感じたが、家庭用のエアコンも設置されていて、快適空間そのものだ。
広さといい、設備の快適さといい、50インチのテレビといい、もうこの空間は車というよりもまさに部屋、といった感じだ。
「このエアコンも、この団地の住民に電気工事屋さんがいて、その人に付けてもらいました。普段は私がDIYアドバイザーとしてここにいるのですが、逆に助けてもらうことも多くて(笑)。そういったコミュニティが出来るのもこの団地の良いところだと思います。」
運転席周りは手付かずの状態になっているのだが、どうしてだろうと気になったので聞いてみた。
「はじめは運転席の周りも木材で囲むように作ろうとも思ったのですが、この運転席のコクピット感がたまらなかったので、あえてこのままにしています。男だったら心くすぐりますよね(笑)」
鈴木さんにこの車の好きなポイントやこれからの展開についてを聞いてみた。
「気に入っているのはボンネットの部分ですかね。ボンネットバスというか、昔で言うコンボイみたいな(笑)。この形のバスって今の車にはなかなかないんですよね。今にはない様式のこのスクールバスにどれだけ今の技術を盛り込んで快適にしていくかっていうのがこれからの課題です。」
このスクールバスのバンビルドはまだまだ進行形だそうだ。
すべてはこの一台から始まった「ベンツ トランスポーター」
鈴木さんが最初にバンビルドを手がけた車は、ご自身が最近まで所有していた「ベンツ トランスポーターT1N(通称ベントラ)」だ。
「バンを探していく中で、海外のバンライフの雑誌やバンライファーのSNS等を見漁っていました。その中でビビっと来たのがメルセデスのベントラだったんですよね。」
欧州では商用車として使われ、日本でいうハイエース的な位置付けのベントラだが、背が高く広い車内とメルセデス・ベンツが持つ上質な格好良さで、海外バンライファーからも人気の高い車種だ。
「この車をバンビルドしてすぐ、嬉しくて四国まで行きましたね(笑)。途中で京都で仮眠したりして。割と長距離を運転するのは苦にならない方なので、大阪くらいまでだったらノンストップで行っちゃうのですが、快適な旅路でした」
このベントラでの思い出を聞くと、古い車ではあったためトラブルも度々あったそうだ。
「この車、すごい好きだったのですが、この年式のベントラが一番じゃじゃ馬って言われてるんですよね。実際に故障はかなり多くて、修理代が結構すごいことになっていました(笑)」
バンの内装で壁面の木は空間を広く見せるため横向きに貼られることが多いが、このベントラは縦に貼られている。
「これは失敗でしたね(笑)。縦に貼ったからちょっと和室っぽくも見えますよね。僕は図面を引いて作るタイプではなく、直感というか、サイズを測りながらその場その場で作り上げていくスタイルなので、最初のこの一台は失敗も多かったですね。ライト類のスイッチの位置もそう。入り口から手が届かないんです(笑)」
実際にバンを作りながら気付くことも多いそうだ。その経験を蓄積して、今の鈴木さんのバンライフビルディングの腕前、センスは確固たるものになっていった印象を受けた。
「最近手放してしまったのですが、このベントラから私のバンライフビルダーとしての仕事や生活が始まったので、とても思い出深いバンです。」
依頼主は某有名企業の社長さま!?「トランスポーターT1」
次に鈴木さんが紹介してくれたのは、先程の鈴木さんの1台目のバンと同じベンツのトランスポーターではあるが、鈴木さんのベントラがT1Nなのに対し、こちらはT1ともう少し古い型となる。
「僕のベントラの内装を見て、気に入ってもらい、依頼していただきました。今まで何台もベントラの内装を手掛けてきましたが、自分のもの以外で、最初に手掛けたベントラです。最初にマネージャーさんから依頼の連絡があったんですよね。最初そんな偉い人だと思わず、キャンプが好きでハイエース乗ってるって言うし、私と同じ感じかなと思っていました(笑)。よくよく話を聞いていくと、高級車を多数所有されたりしていて、某企業の社長さんだと後から知りました。」
こちらのT1も当時日本で正規輸入されていたもので、右ハンドルになる。角々したルックスはベントラファンの中でもファンの多いモデルだ。
「こだわりの強いオーナーさんだったので、木の種類や色、棚の形も絵を描いたりして、オーナーさんと話し合いながら丁寧に作り上げていきました。念密に打ち合わせしたこともあり、思い出深い1台です。」
オーナーさんのご依頼のテーマは「大人の秘密基地」だったそう。
キャンプギアの道具箱のような壁面棚、使い勝手の良いスライド式のキッチン、イギリス軍で使用されたローバーチェア、ヴィンテージのライト類、高音質のスピーカー、ガジェット好きな男心もくすぐるバンビルドだ。
バンの車上は木製のルーフバルコニーになっていて、そこにテントを貼ることもできる。
「オーナーさんの好きなものを詰め込んだ、まさに大人の秘密基地って感じですよね。オーナーさんが用意した照明やスピーカーも拘りがあって、一緒に作りあげていく感覚が楽しかったですし、納車した時に仕上がりを見て喜んでいただけたのが何よりも嬉しかったですね。」
まるで美術館!?
三浦市の観光用のマイクロバスを蘇らせる
「次はマイクロバスです。こちらは三浦市の観光会社で『役目を終えたマイクロバスにもう一度命を吹き込む』プロジェクトとして依頼を受けました。」
お客を乗せて走るバスとしての役目を終えたマイクロバスの内装を鈴木さんにお願いしたいと、このプロジェクトに声がかかったそうだ。
キャンピングカーとしてはもちろん、イベントでの展示スペースや休憩スペースなど幅広い用途で使えるよう、最低限の機能でありながら、限られたスペースで実用的にも作られている。
「こちらのオーナーさんは、奥さんが元々設計事務所で働いていた方だったので、図面を用意してくれたんですよね。なので内装の質感やディテールをご提案しました。これまでにないスタイルだったので作っていて楽しかったですね。」
天井のモダンな感じがシュッとしたスタイリッシュな印象を受ける。
床もストーン調になっていて、壁面の広めのスパンで穴の空いた有孔ボードも実に格好良い。
天井の細めのスパンで貼られた板が印象的だが、海外バンライファーの間でも密かに人気のスタイルだそう。そういったグローバルなトレンドをさりげなく取り込むセンスも鈴木さんならではだ。
これからも依頼者の理想のバンライフをつくっていく
これまで多くの人の夢のバンライフを実現させてきて、ご自身もトランスポーター、スクールバスと乗り継いできた鈴木さんに今後バンビルドしたい車はあるのだろうか。
「よく聞かれます。どんどん大きくなってきているので(笑)。次は飛行機?って(笑)。実は今すごく気になる車があって。今度初めて日本で正規販売されるFiatのデュカトが気になっています。」
FIatのデュカトとは、今度日本に初進出する、イタリア生まれの独創的なエクステリア、幅広いカスタムに対応する汎用性、そしてセダンのような快適な乗り心地で、欧州で絶大な人気を誇る商用バンだ。
「日本で言うとことのハイエースみたいな位置付けなんですけど、とにかく格好良いんですよね。そんなデュカトが初めて日本で正規ディーラーを通して販売されることになって、注目しまくってます(笑)。」
5年あまりバンビルドし続けてきた鈴木さんに、バンライフビルダーとしてのこだわりを聞いてみた。
「やはりバランスなんですよね。あまりフワッとし過ぎてもナチュラル過ぎちゃったりして。たまにコンセントなんかがあって引き締まる部分もあったりして。そういった全体のバランスを常に見るようにしています。生活感を極力出さないようにしたり。」
依頼者のリクエストも、最初からがっちりと仕上がりのイメージができている人もいれば、ほぼほぼ鈴木さんにお任せなんて人もいたりと、依頼主によって様々なようだ。大変そうにも思えるが、鈴木さんはそれすらも楽しんでいるように感じた。
「どんな依頼のされ方であれ、お客さんの言語化できない部分を、汲み取って形にし、完成した姿を見てもらった時に喜んでもらえるのがやっぱ嬉しいし、シンプルにやりがいですよね。」
鈴木さんはモノづくりを心から楽しんでいるように思えた。
好きを仕事にするかしないかは個人差があるだろうが、鈴木さんは好きを仕事にする方を選んだ。それは個人向けや企業向け関係なく、これからも依頼者に理想のバンライフを提供していく決意の表れだ。
「バンビルドもDIYも、モノづくりをどれだけ楽しんで作るかが大切なのかと思います。僕は依頼者のお話を聞く時や、実際にバンビルドしている時がすごく楽しくて。そうじゃなくて作るかで出来上がりが大きく変わってくると思うんですよね。楽しんで作ることが一番だと思います。」
自分の車であれ、依頼された車であれ、鈴木さんはバンライフの喜びを提供することを、バンライフビルダーとして誰よりも楽しんでいるのだ。
東京都出身。
20代で工務店勤務の大工となり、店舗や住居のリノベーションを多数手掛ける。趣味と実益を兼ねて製作したカスタムバンがきっかけで、ベンツのトランスポーターT1N / カスタムスクールバスの内装を自分で車中泊カスタムしながらバンライフならではの「思い立ったらすぐに行動できる」暮らしをバンを通じて実践中。
現在使っているカスタムスクールバス内装は見た目だけでなく、住居レベルの快適空間を作るため、バッテリーやエアコンなどにもこだわり、大型のソーラーパネルをルーフに取り付けるなど実験的な取り組みも行っています。さらに現在はバンのビルダーとして活動中。